「その違約金、本当に必要ですか?」
リース契約中途解約の神話を解体する

弁護士に相談する3つのメリット 的確な見通しが立つ 時間と精神的負担の軽減 経済的利益の最大化
沖縄県内の事業者から、「県外の事業者とのリース契約で、違約金を支払わなければ中途解約できないと言われ、やむなく高額な違約金を支払った」という相談が後を絶ちません。しかし、契約書に記載されているからといって、その違約金を満額支払う義務が常にあるわけではありません。本稿では、リース契約の法的性質を解き明かし、不当な違約金請求から事業を守るための知識を解説します。
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの決定的違い
まず理解すべきは、リース契約には大きく分けて2つの種類があるという点です。
ファイナンス・リース契約: これは、実質的にリース物件を分割払いで購入するのと同様の契約です。契約期間中の解約が原則として認められず(ノンキャンセラブル)、リース料総額が物件の購入代金や諸費用をほぼカバーする(フルペイアウト)という特徴があります 。この種の契約では、中途解約に応じてもらう場合、残りのリース料全額に相当する損害金の支払いを求められることが一般的です。
オペレーティング・リース契約: ファイナンス・リース以外のすべてのリース契約がこれに該当します。コピー機やサーバー、社用車など、多くの事業用資産のリースはこちらに分類されます。ファイナンス・リースとは異なり、法的には賃貸借契約としての性質が強く、原則として中途解約が可能です。
多くの事業者が陥る罠は、リース会社がファイナンス・リースの「中途解約不可」という原則を、あらゆるリース契約に当てはまるかのように説明し、高額な違約金を請求する点にあります。自社の契約がどちらの性質を持つのかを正確に把握することが、交渉の第一歩となります。
契約書の違約金条項は絶対ではない
たとえオペレーティング・リース契約書に「中途解約の場合は、残リース料全額を違約金として支払う」といった条項があったとしても、それが常に法的に有効とは限りません。裁判所は、契約条項が一方的に不利で過大な不利益を課す場合、その効力を制限することがあります。
例えば、不動産賃貸借の裁判例ですが、10年間の定期建物賃貸借契約を中途解約した賃借人に対し、貸主が残存期間分(約10年分)の賃料相当額を違約金として請求した事案で、裁判所はこれを認めず、賃料30ヶ月分に減額する判決を下しました 。これは、違約金が実際の損害を大幅に超えて懲罰的な性質を持つ場合、裁判所がその妥当性を審査し、相当な範囲に制限することを示す重要な事例です。リース契約の違約金についても、同様の考え方が適用される可能性があります。
裁判例に見る違約金減額のロジック
さらに、リース物件が事故などで全損した場合の裁判例も参考になります。ある事案では、交通事故でリース車両が全損となり、リース会社との合意に基づき、車両の時価額の損害賠償請求権をリース利用者が得ました。その後、利用者が加害者に対し、車両時価額に加えて中途解約違約金も請求しましたが、裁判所は違約金部分の請求を認めませんでした 。その理由は、車両の価値(時価額)を賠償で受け取っているにもかかわらず、車両価値の補填も含む解約金まで受け取ることは「二重取り」にあたり、不当であると判断されたためです。
この判決は、違約金の内訳が精査され、実際の損害額を超える部分については支払う義務がないと判断される可能性を示唆しています。不当な請求に直面した場合は、安易に支払いに応じるのではなく、国民生活センターや弁護士などの専門家に相談することが重要です 。
多くのリース会社は、事業者側が法律知識に乏しいことを利用して、本来であれば認められないはずの過大な請求を行っています。契約の法的性質を理解し、違約金条項の妥当性を疑う視点を持つことが、自社の利益を守る上で不可欠です。